すぐそばにある幸せ

満開の桜も散り始め、全身に春を感じる季節
冬の寒さをいつのまにか忘れ、夏の気配に身構えはじめる今日このごろ

あんなにあたたかさが恋しかったのに、すでに涼しい風を求めはじめているわたし。

まだ寒い2月のある日、ちょっとしたハプニングで、とつぜんお風呂に入れない!という事態に直面した。


うちのお風呂は、今ではもうかなりめずらしくなった、着火式のバランス釜。ガスをつける要領で、手回しハンドルを回して着火させる。そのハンドルは逆回転させると簡単に外れる仕組みになっている。
うちには、ちいさな “おチビかいじゅうさん” がいて、このハンドルで遊ぶのが大好き。そのため、うっかり外されて無くなってしまわないよう、着火するとき以外は、敢えて外すようにしていた。というのも、以前、うっかりしたすきに外されていて、お風呂桶の隙間に入り込んでしまい、なんとかかんとか救出したことがあったからだ。


わたしは、お風呂掃除を夕飯後にすることが多い。その日も、夕飯をもりもり食べて、パワー全開であしょぼー!っと足にまとわりついてくるおチビかいじゅうさんをあそばせながら、お風呂掃除を終えて、さぁ、お湯を入れよう!とガスをつけるべく着火ハンドルを持ったそのとき!
せまる就寝時間を気にしながら急いでいたため、よく石鹸を落としきっていなかったわたしの手から、ハンドルがつるんと抜け落ちて、なんとなんと手の届かない隙間へ、さ〜よ〜う〜な〜ら〜…!!!

お風呂桶の下を覗き込むと、白っぽいものが見えている。掃除用のブラシの柄を使ってみたり、玄関から傘を持ってきてみたり、ゴミ拾い用のトングを投入してみたり…思いつくことは全てやってみたけど、あともうちょっと、のところで、逆にハンドルの白い影は無残にも遠のいていき…

格闘すること数十分。ついにあきらめるときがきた。
あぁ、一日中めいっぱい遊んで食べてしっかりキチャナくなったこのおチビかいじゅうさんをお風呂に入れられないとは…!!
お風呂に入ればスッキリツルピカになるのに。あきらめきれない…でも、どうにもなりそうにもない。

自分はともかく、まだ皮膚が薄くて汗や食べ物の刺激でかぶれやすく、一般よりも少し肌の弱いおチビかいじゅうさんをお風呂に入れられない日があるなんて、とっても辛かった。

その日はまだ冬の真っ只中、かなり寒かったので、温かいお湯を洗面器に張って、すぐに冷めてしまうタオルを何度も温めながら清拭した。


このことがあるまで、わたしは、古めかしいバランス釜のお風呂場を、【あ〜あ、もっと近代的なお風呂場だったら色々便利で良いのにな〜】とか、【もう少し機能的になっていれば一人でお風呂入れるのも今よりは楽になるのにな〜】とか思ってた。

でも、この日ハッキリ分かった。そんなことはどうでもよくて、温かいお湯に浸かれてシャワーで洗い流せて、おチビかいじゅうさんの大好きなお風呂のお友だち(おもちゃたち) が沢山いて。それだけでどんなに幸せなことか、って事を。

幸い、翌日の朝一で業者に連絡したら即対応をしてくれたため、お風呂に入れなかったのはこの日限り。そして、その晩、新しいハンドルでガスをつけ、1日ぶりに入れたお風呂のなんとありがたいことありがたいこと。

きっと、この出来事は、ないものばかりに気がいっていて、今あるものに気がつけなくなっていたわたしへ、『ほーら。こんなにたくさんあるのに、何が不満なんだい? 』と誰かが言ってくれたような気がした。

それ以来、ハンドルは付けっ放しにしてます(笑)
おチビかいじゅうさんより、うっかり母さんの方が危険なので(笑)

そして、日々成長していくおチビかいじゅうさんの興味は、もはやハンドルになく、今はもっぱら新入りのお風呂ともだち、スポンジ電車とカエルさん。


お風呂って、本当にありがたい!
これからの季節、ますますそう思うこと間違いなし!

バランス釜をお使いの皆様、くれぐれも、ハンドルの紛失にはお気をつけあーれ!(…稀少なバランス釜ユーザー、そうそういないか(笑

ふうこ